■糸魚川−静岡構造構造線と春木川
身延山と七面山を分ける春木川沿いに、日本を横断する糸魚川−静岡構造線(糸静線)が走っている。この構造線を境に、身延山側にはフォッサマグナに噴出した火山岩類、七面山側には深い海の泥岩が分布する。
泥岩には劈開が入り、ペラペラとはがれやすいスレート(粘板岩)になっている。火山岩は侵食に強いため急崖をつくる。表参道入口の羽衣では、右岸側に白糸ノ滝がある。
春木川は糸静線が走っていることと、上流域に大崩れがあることから、砂礫がたいへん多くて荒れた様相をみせている。羽衣の上流では砂防工事が盛んに行われている。
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▲糸静線に沿う春木川 |
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■表参道をとおって山頂へ
山門をくぐってスギ・ヒノキの巨木に覆われた表参道を登る。登り口には石英安山岩が転がっているが、すぐにスレートになる。ときどき砂岩を含んだりするが泥岩主体の岩相がつづく。途中には4つの坊があり、休憩したり水を補給することも可能だ。
参道にはゴミ一つなく、よく整備されて歩きやすい。荷揚げ用のケーブルがみえてくると、山頂も近い。山頂の手前には山門があり、これをくぐって石段を登れば、山頂の一角につく。
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▲敬慎院の山門 |
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■山頂周辺の散策
石段を登ると鐘楼と手水が迎えてくれる。この山頂周辺は、身延山久遠寺の寺領となっていて、早川町内につくられた身延町の飛地となっている。
すぐ近くには富士山のすばらしい展望台がある。身延山(1153m)がずっと下の方にみえる。ここで富士山から登るご来光を拝めば、信者でなくとも心が洗われるにちがいない。
敬慎院は、一ノ池を取り囲むように建てられている。この池は大きな舟底状の凹地にできたものだ。この凹地を南にたどっていくと大崩れにでる。
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▲舟窪状凹地にできた一ノ池 |
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■七面山大崩れ(ナナイタガレ)
凹地にそってゆるい斜面を南へ登っていくと、急に明るくなり、崩壊地の縁にでる。ここからは大崩れの全貌をみることができる。大崩れは1854年の安政東海地震もしくは1852年の北飛騨地震の際に発生したとされてきたが、最近1600年代から大崩れは存在し、安政東海地震の頃に崩れが拡大したことが示された。
今でも盛んに崩壊しているらしく、崖には植生が乏しく崖錐が発達している。崩壊地の上部と下部に黒っぽい泥質岩があって、中央部には砂岩があるようにみえる。著しく変形しているが、地層は全体的に西に傾斜している。これは崩壊地から寺院のある北側にかけて地層が東へ倒れかかるようにクリープしているからだ。さらに、一ノ池からのびてきた船底状の凹地は、平行する重力性の正断層によって落ち込んでできたらしい。クリープ域の南部で船底状の凹地が大崩壊し、北部は崩壊からかろうじてまぬがれたような地形だ。
崖の沿って樹林の中を登っていくと、崖の縁に沿う東西方向の線状凹地と、船底状凹地に平行する南北方向の線状凹地が3本ほどみられる。最後の線状凹地を越えると山頂の二等三角点にでる。山頂からは樹林越しに笊ヶ岳や荒川岳をみることができる。
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▲膨大な砂礫を押し出す大崩れ |
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