中学校美術部の展示見学

ブログ 今日の美博

先日、竜峡中学校美術部のみなさんが、飯田市美術博物館に見学に来ました。

まずは40分間、美術博物館全体を自由に見学。自分たちが暮らす地域の自然、文化、美術と出会います。

見学が終わった後は、講堂にうつって約30分間、博物館入門の解説。

解説の後は郷土の大先輩、菱田春草の丁寧な鳥の作品や写生を見た後なので、同じように鳥の剥製を描いてみることに。
(自然部門から鳥の剥製を借りられるのが美術博物館の強みです)



よくみて、いろやかたちの魅力をさがして、自分が気になったところを丁寧に描く体験をしました。


午前中半日、たっぷり美博で過ごしてくださいました。
竜峡中学校美術部のみなさん、ありがとうございました!

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第34期】ミニ解説④下村観山《稚児文殊》

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています!展示作品から1点、紹介します。

下村観山《稚児文殊》

春草と観山は、共に日本美術の革新を目指し切磋琢磨しあった仲でした。観山は、春草にとって年齢も美術学校の学年も春草の1つ上の先輩です。美術学校卒業後も、日本美術院で拠点を共にし制作に励みました。春草にとって長い時間近くにいた、画家仲間の一人です。

また、春草と観山の関係において欠かせないのは、春草の兄・為吉との関係です。為吉は、東京に暮らした頃は春草の生活の面倒をみていました。為吉の給料日になると、春草とその友人数人が為吉の帰宅を家の前で待っていたそうです。そして為吉の給料から、春草は1円札をもらい、友人たちとご褒美外食に繰り出したそうです。その友人たちの中にいた1人が、観山でした。
美術学校を卒業後、観山は画家兼同校の教員になりました。社会人になり、画家になり、学生時代にご馳走になっていた為吉へお礼を伝えるために1つの作品を描いて贈りました。まさにそれが、《稚児文殊》でした。

菱田春草記念室 常設展示 第34期 美術学校での学び-春草の基礎学習-は5月29日まで。画家・春草の始まりをぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

6月26日■自然講座「気候変化と文明の盛衰は関係するか?」(要申込)

講座


講師:山田 桂さん(信州大学教授)

日時:2022年6月26日(日曜日)午後1時30分〜3時
会場:美術博物館 2階 講堂

定員:50名(申込先着順)
申込:6月11日(土)午前9時30分から電話(0265−22−8118)で受付。
*聴講は無料です。

【内容】
近年、数十年〜数百年程度の感覚で過去の気候変化を読み取れるようになりました。その結果、歴史記録と科学データとの対比が可能となり、過去の文明の盛衰と気候変化が関連した可能性が指摘されています。講座では、中国、マヤ文明、日本での例を紹介します。

チラシPDF⇒220626自然講座

 

6月25日■プラネタリウム特別投影「野尻抱影を読む」

プラネタリウム

日 時:2022年6月25日(土) 午後3時30分〜4時30分
場 所:プラネタリウム天歩

参加費:小中学生50円、高校生150円、一般250円
(就学前のお子さんが座席ご利用の場合は小中学生料金が必要です。)

定 員:45名 (当日受付・先着順)

 

英文学者でありながら日本各地の星の呼び名を収集し、冥王星の命名者でもある「野尻抱影」の随筆(エッセイ)をプラネタリウムの星と共に楽しみます。

6月19日■電子顕微鏡観察教室 

イベント

日時:2022年6月19日(日)
   午前11~12時、午後2時~3時
会場:美術博物館 科学工作室
担当:村松 武(地質担当)

電子顕微鏡で微の世界をご覧いただけます。
自然学芸員が伊那谷の自然に関する相談などにも応じます。

*申込み不要。
*参加には展示観覧券が必要です。

6月19日■美術講座 表現をひらく「鈴木芙蓉の真景図」(要申込)

講座

講師:槇村洋介(本館学芸員)
日時:2022年6月19日(日曜日)午後1時30分〜3時

場所:飯田市美術博物館 2階講堂
定員:50名(申込先着順)

申込:6月5日(土)午前9時30分から電話(0265−22−8118)で受付
*参加は無料です。

【内容】
飯田市北方出身の南画家、鈴木芙蓉が手がけた真景図について、新収蔵品《鳴門暁景図》や代表作の《那智瀑泉真景図
》を通して、芙蓉が新たに開いた世界について探っていきます。

6月12日■文化講座(見学会)「日夏耿之介の足跡を訪ねて」(要申込)

講座

講師:織田顕行(本館学芸員)
日時:2022年6月12日(日曜日)午前9時30分〜12時

集合:日夏耿之介記念館前
定員:20名(申込先着順)

申込:5月28日(土)午前9時30分から電話(0265−22−8118)で受付
*参加は無料です。

【内容】
墓所や文字碑など市内に点在する詩人日夏耿之介ゆかりの場所を散策します。
*本講座は見学会です。

【春草展示第34期】ミニ解説③《鎌倉時代闘牛の図》

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています。展示作品から1点を詳しく紹介します。


菱田春草《鎌倉時代闘牛の図》明治27年4月 飯田市有形文化財

①豊かな表情
都路で突然始まった牛のぶつかり合い。驚く人、賑やかす人、嫌がる人、怖がる動物も。感情や声まで想像できる、それぞれの豊かな表情に注目してご覧ください。

②こだわりの線描
牛は、抑揚のある線で、力強い体の様子を描いています。人物の着物は、ハリのある着物は硬いまっすぐな線で、着慣れた様子の着物は曲線で、質感を描き分けています。

③絵巻物からの学び
古画からの学びは、春草の生涯を通して制作の軸となります。本作を描くときには「鳥獣人物戯画」の乙巻や「一遍上人絵詞伝」など絵巻物を参照したと考えられます。特に、「一遍上人絵詞伝」は模写が複数残っており、特に人物表現、表情や装束に注目して描いています。鎌倉期の特徴ある装束は、《鎌倉時代闘牛の図》にそっくりな姿で引用されています。

④西洋美術の技術を取り入れた空間
手前側を濃い色で、奥を薄い色で描く空気遠近法を取り入れています。また、画面の左上のぼんやりとした表現で、奥にも空間が広がっていることを描いています。このように、西洋美術の空間・遠近の表現を取り入れています。

⑤新しい日本画の姿
①〜③は言い換えれば古画からの学び、④は西洋美術の技術。日本の伝統や筆法を学ぶ「臨画」の学びと、西洋の写実・空間表現の学び「写生」をもとに、独自の制作を進めていく「新按」らしい作品で、これこそが美術学校が目指していた「新しい日本画」と言えるでしょう。着実に学び、意欲的な新按の制作を行っていた春草だからこそ描くことができた作品です。

⑥兄へ贈った受賞作
この作品は、東京美術学校の校友会臨時大会に出品し、約260点中2位の成績を受けました。現存する中では最初の受賞作品です。
春草の兄・為吉は、春草が画家の道に進むことを応援し、東京で暮らす間は春草の生活の面倒を見ていました。為吉が熊本へ赴任中は、春草は度々書簡を通して、学校での出来事や制作の構想などを伝えています。明治27年6月8日付の為吉宛 春草書簡では、岡倉天心から受けた指導、自身の卒業制作への意気込みなどを語った後に「賞の画(牛の画)」を贈ります、という内容が書かれています。良き理解者である兄へ、受賞作を贈ることで学びの成果や感謝の気持ちを伝えたかったのかもしれません。本作は長く菱田家の所蔵にあり、平成30年から当館の所蔵に、そして飯田市有形文化財に指定されています。

菱田春草記念室 常設展示 第34期 美術学校での学び-春草の基礎学習-は5月29日まで。画家・春草の始まりをぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

子ども美術学校①友だちの顔をかく

ブログ 今日の美博

飯田下伊那の小学校4年生から6年生を対象とした絵画・工作の基礎講座、子ども美術学校。(地域ゆかりの作家 菱田春草の学んだのが「東京美術学校」なのが名前の由来だとか)今年度も開校しました!

第1回目は「友だちの顔をかく」がテーマ。

隣の席の、はじめましてのお友だちの顔を、かたちや色を発見するつもりで、よくみる。

まずは黄色のチョークのはらを使って、もあもあ と大きく形をとらえます。

つぎに、黒色のパスで線描きをします。息の長い一本線で、カタツムリのはやさで、力強くかく線・弱めにかく線を使い分けながら。友だちの顔から目をはなさずに描きます。

交代でお互いの顔をとらえた後は、色塗りです。よくみたときに感じた色を、6色以上パレットに出して、とんとんと筆先で色を置いていきます。気分は印象派の画家。色の重なりも、全体の色合いも、楽しみながら塗っていきます。


いい色ができた!とんとんとん…


「日焼けしてるからすごく赤く見えるよ!」
「まぶたのところにすこしみどりがある!」

お互いの顔をよくみながら描いていくうちに、自然と打ち解けていきます。

個性豊かなお友だちと、楽しい美術学校になりそうな予感!1年間よろしくお願いします☺

(美術部門:菱田春草記念室担当)