菱田春草記念室 常設展示スタート!

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開館以来の念願だった菱田春草記念室の常設展示が、ついにスタートしました!

今回の第一期には「菊慈童」が登場しています。
また新たに購入する「水辺初夏(鷺)」や春草の未完成作など、初公開の作品も並んでいます。

春草の芸術をじっくりご堪能ください。

企画展「世界最南端のライチョウがすむ南アルプス」明日オープン!

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企画展「世界最端のライチョウがすむ南アルプス」
会期:平成29年7月15日(土)~12月24日(日)
フラヤーダウンロード→2017南アルプス展フライヤー

 

s-南アルプス展フライヤー表

 

 

この数ヶ月かかりきりだった企画展示準備が終わりました〜!
明日、7月15日(土)オープンです。わーパチパチパチ・・・。

展示室の様子をちょっとだけ紹介しましょう。

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入り口はこんな感じ。

 

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中に入ると…。
南アルプスの峰々を背景に、ライチョウのジオラマがでで〜んと。
ここではバードカービングのライチョウに注目です。

 

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ライチョウコーナー。

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高山植物コーナー。

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ライトトラップのイメージジオラマもあります。
モデルは…(笑)

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調査道具30kgの体験コーナも。

 

そうして、今回も手帖を作りました!
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南アルプス ライチョウ手帖
南アルプス 高嶺のむし手帖
の2種類です。

どちらも展示室で配布します!
欲しい方、ぜひ飯田市美術博物館へ足をお運び下さい!!

展示室でお待ちしております!!!

南アルプスいきものがたり タカネマンテマ

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タカネマンテマ

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南アルプスの限られた山域だけに生育する希少な高山植物タカネマンテマ。
その珍奇な姿と奇妙な名前を図鑑で見たときから「いつかは絶対タカネマンテマ」って思っていました。しかし、希少な生き物は皆そうですが、素人がちょっと生育地を訪れてみたくらいでは、まずその姿に出会うことは叶いません。季節と場所と運が一致してはじめて、覆っていたベールが剥がされ、出会うことができるのです。

タカネマンテマを見てみたいという話をアチコチで喋っていたところ、「北岳のあのへんに生えているらしいよ」という情報を教えて下さった方がいました。幸い去年(2016年)は北岳に登る予定があったので、今回こそは是が非でも、という気分で挑みました。

天気は上々、教えてもらったあたりでザックを下ろし、あちらの岩陰、こちらの崖ぎわを懸命に探して回りましたが見つかりません。「やはり希少種、簡単には見つからないか」と思い始めた頃、同行していた娘が「へんな草があるよ」と登山道脇を指さしたのです。その指の先には、珍奇で奇妙な憧れの花、タカネマンテマがありました。一度見つかり出すと、アチコチにあるのが見えてくるから不思議です。こうして僕はタカネマンテマの写真を無事撮影することができ、さらにキタダケキンポウゲやキタダケヨモギ、ムカゴユキノシタなどの珍しい花々にも出会うことができたのでした。

この時は、まさか翌年(2017年)、キタダケソウの写真を撮りに再び北岳を訪れるとは思ってもいなかったですけどね(四方)。

南アルプスいきものがたり マルダイゴケ

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マルダイゴケ

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2013年に開催した企画展「生きものの小べや」では、コケの魅力を紹介する「コケのへや」を作ったのですが、その準備の中で、マルダイゴケの存在を初めて知りました。キノコやコケ写真の第一人者で、現在は糞土師を名乗る伊沢正名さんが書かれた、この高山に生える美しいコケを紹介したエッセイ*を読んだのです。

その文章の中に、マルダイゴケの「臭い」の記述がありました。この美しいコケの胞子は「ウンコ」のにおいがして、その臭いに惹かれて集まってきたハエが胞子を運搬するというのです。マルダイゴケは、動物の糞などの上に生えるコケで、胞子を糞の上に飛ばすには、不確実な風に頼らずにハエを利用しているといいます。それ以来、僕はこのコケに出会ってみたくて、密かに片思いしていたのでした。

 

2016年8月、南アルプス上河内岳で昆虫の調査をしながら登山道を歩いていたときのことです。美しいコケが僕の視界に飛び込んできました。動かないコケだから飛び込んできたというのはちょっとヘンですが、僕にはそう感じたくらい岩の間に生えたコケに目が釘付けになったのでした。

初めて出会うマルダイゴケに、僕は夢中になってカメラをむけました。そうして十分に撮影したあと、今度は地面に這いつくばってそっと鼻を近づけてみました。臭いは伊沢さんが書かれていた通り、まさにウンコ。もう一度嗅いでみてもウンコ。何度も嗅いでいるうちに、嗅ぎすぎて喉の奥がオエッってなってしまいました。

マルダイゴケを心ゆくまで楽しんでいると、一匹のハエが飛んできて胞子の上を歩きまわりはじめました。本の通りです。やがて胞子を体に付けたハエは、別の場所へ飛んでいき、新しいウンコの上に次の世代のマルダイゴケが育つのです。

見た目、臭い、暮らしぶりのどれをとっても面白いマルダイゴケ。僕にとって高山植物の花形のひとつなのです。

*「このは」No.7「コケに誘われコケ入門」文一総合出版32-33p

南アルプス生きものがたり キタダケソウ

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キタダケソウ

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南アルプス北岳特産のこの植物は、雪解けすぐの6月中旬に花の時期を迎えます。例年登山口となる広河原までの林道が開通するのが6月下旬。この頃には花が終わりの季節になってしまい、キタダケソウが満開の時に北岳を訪れること自体容易ではありません。おりしも梅雨の真っ最中。うまく花の時期が合ったとしても青空の下でキタダケソウに出会うことの困難さは想像に難くないでしょう。

しかし、今年(2017年)は稀にみる幸運に恵まれました。6月の空梅雨と低温の影響で雪解け進まず、キタダケソウの花期が1週間近く遅れたのです。林道の開通した6月23日はちょうど満開で、この日に登った僕たちは、斜面一面に咲くキタダケソウに出会うことができました。さらに北上する予報だった前線が南に下がってくれたため、北岳上空には青空が広がり、撮影に出かけた2日間とも天気に恵まれたのでした。

キタダケソウの咲き乱れる東向き斜面は、晴れると背景に間ノ岳と農鳥岳をのぞむことができます。透明感のある白い花と、初夏の青空、残雪をまとった白根の峰々を一つの画面の中に収めることができる幸せに感謝しながら、夢中でシャッターを切りました。(四方)

南アルプス生きものがたり テカリダケフキバッタ

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テカリダケフキバッタ

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南アルプス最南部の「光岳(てかりだけ)」がこのバッタの名の由来です。光岳で発見され、その後も光岳以外ではほとんど見つかっていない、希少な高山性バッタがテカリダケフキバッタです。
世界で飯田市と静岡市でしか見つかっていないこのバッタの標本と写真を、ぜひ我が飯田市美術博物館でも保存したいという思いがあり、2016年ついに環境省の許可をもらって調査のために入山しました。

s-テカリダケフキバッタ2016 08 31_8303上河内岳

高山昆虫調査のベースキャンプにした茶臼小屋から光岳まで、往復10時間ほど。日帰りで行けない距離ではないですが、行って確実に出会えるかわらないバッタを探しに行くにはちょっと遠いなと躊躇していた時のことです。
上河内岳の山頂近くに高山植物が咲き乱れる急傾斜なお花畑があって、季節はちょうど夏の花盛り。タカネマツムシソウやホソバトリカブト、タイツリオウギ、タカネナデシコなどの花々が咲き競っておりました。花々にはマルハナバチやナカトビヤガが訪れ、足下ではアカイシコバネヒナバッタが跳ねます。ニホンジカの食害でひどい状態のお花畑が多い南アルプスですが、この場所は急傾斜のためか食害が目立たず、残された楽園のような雰囲気の場所でした。

s-テカリダケフキバッタ2016 08 31_8460上河内岳

花に来る虫たちの写真を撮影しているそのとき、ちょっと雰囲気の違うバッタが目に入りました。何だろうと思い、なにげに捕まえようとしたところ、真剣味が足りなかったのかうかつにも逃がしてしまったのです。逃げられたバッタを思い出せば思い出すほど、どうもテカリダケフキバッタではなかったかと思えてきて、2日後に再びここを訪れ大捜索を行いました。その結果、成虫1♂と多数の幼虫を発見することができました。

s-テカリダケフキバッタ2016 08 31_8312上河内岳

光岳に次ぐテカリダケフキバッタの多産地の発見でした。この発見のおかげで、光岳までの往復10時間の遠征は行わずにすみました。今年はさらに北部で新たな産地を発見すべく、南アルプスの稜線を探索し、この南アルプス固有種の分布域を明らかにしたいと思っています。(四方)

企画展「世界最南端のライチョウがすむ南アルプス」の展示準備始動!

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企画展「世界最端のライチョウがすむ南アルプス」
会期:平成29年7月15日(土)~12月24日(日)
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展示スタートまであと3週間弱。月曜の休館日を利用して、いよいよ展示室づくりのスタートです。
企画展示室の入り口を封鎖して、中でコソコソ展示準備を始めました。

 

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まずは高山植物のコーナーを彩るパネル類の打ち出しからスタートです。

いやぁ。高山植物ってなんて魅力的なんでしょう。打ち出した写真を見ていると、虫屋の私でも惚れ惚れしてしまいます。

つい先日撮影したばかりの、今年のキタダケソウの写真も早速印刷。
今回は「最新の調査結果」を赤裸々に紹介することを標榜している企画展。
撮れたて映像や採れたて資料も続々登場しますよ!
乞うご期待なのです!!! (S)

 

南アルプスのライチョウ その2

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企画展「世界最端のライチョウがすむ南アルプス」
会期:平成29年7月15日(土)~12月24日(日)
フラヤーダウンロード→2017南アルプス展フライヤー

 

世界最南端のライチョウ

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企画展のタイトル通り、南アルプスは世界最南端のライチョウの生息地です。
そうして、その南アルプスの中でも、飯田市域の部分は最南端の南端になります。
正確には飯田市と静岡市にまたがるイザルガ岳が南限の繁殖地です。

 

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上の写真は最南端にほど近い、上河内岳で昨年撮影したライチョウです。

この周辺では、静岡ライチョウ研究会の方々が精力的に調査されていて、生息数や移動記録などを調査されています。
写真のライチョウにも足輪がつけられて、個体識別されています。

山で足輪のついたライチョウに出会ったら、写真を撮って(できるだけ4つのリングが識別できるように複数枚撮ってくださいね)、当館へご連絡下さい。
あなたが見たライチョウが、南アルプスのライチョウを保護するための貴重な情報となります。

この夏、足輪のついたライチョウを見かけたらぜひご一報下さいね。

南アルプスのライチョウ その1

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企画展「世界最端のライチョウがすむ南アルプス」
会期:平成29年7月15日(土)~12月24日(日)
フラヤーダウンロード→2017南アルプス展フライヤー

 

展覧会名の通り、今回の主役はイチョウです。
ご存知のように、ライチョウは高山すむ鳥で、日本では、火打岳、北アルプス、御嶽山、そうして南アルプスに生息しています。

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富士山を背景にしてたたずむ南アルプスのライチョウ

 

イチョウは出会う季節によって、体の色が違うって知ってましたか?
多くの人は夏山シーズンに出会っていると思うので、茶色のまだら模様というのがライチョウのイメージではないでしょうか?
私もそうでした。

ところが、初夏の繁殖期には、オスは美しい黒い羽毛をまとい、メスとオスでは体色が全く異なるのです。
ほらこんな感じに↓

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▲上:オス 下:メス(6/6撮影)

初めてこの時期のライチョウに出会ったとき(じつはつい先日のことなのですが…)、オスの艶やかに黒い羽の、あまりにもの美しさに、言葉を失ってしまいました。

 

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繁殖期のオスは目の上の赤い肉冠が目立ちます。
なわばりを守るために首をハイマツから突き出して警戒する様子は、青空と残雪に映えて、それはそれは凛々しくてカッコいいのです。

展示室では、イチョウを標本、写真、動画などで紹介したいと思っています。鳴き声も聞けます!
この夏は、かっこいい繁殖期のライチョウに会いに(山にも、美術博物館にも)、ぜひお出かけくださいね! (S)