柳田国男没後60年

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民俗学の創始者として知られる柳田国男が昭和37年8月8日に亡くなって今年で60年になります。

 飯田市美術博物館の付属施設である柳田國男館は、国男が明治34年(1901)旧飯田藩士の柳田家に養嗣子入りした縁により、東京の成城にあった柳田の書斎兼住居を平成元年(1989)に移築した建物です(平成28年に国の有形文化財に登録)。

 柳田と飯田との縁は単に旧飯田藩士の家に養子入りしたことにとどまりません。ある時には国家官僚として飯田を訪れ、民俗学の研究に本格的に進んだのちは飯田下伊那の郷土史家たちと交流し、様々な影響をもたらしました。特に、昭和11年(1936)には飯田の山村書院から『信州随筆』を出版しています。これは、柳田の著作のなかで唯一、初版が地方出版社から刊行されたものとされています。

 国男が養子入りした柳田家は、藩主堀家が下野烏山城主だった時代からに仕えてきた家柄です。今年はその堀家が飯田に入部して350年の節目の年でもあります。柳田國男館では柳田家への養嗣子入りにはじまる柳田国男と飯田にまつわる資料を展示しています。

(民俗担当)

宇宙朝顔④ 一気に季節がすすみました!

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プラネタリウムの宇宙朝顔。すっかりブログ更新がご無沙汰でした。すみません。

早くつるが伸びないかと期待していたら、成長の良い1本目がのびはじめました。

 

6.29撮影

つるが伸び始めました。暑くてしおれています。

一本目の伸びの良かったアサガオは未だ咲きません。

8.7撮影

今日から立秋。最近のアサガオ。数日前から一気に咲きだしました。

2度目の梅雨もどきを経て「夏」に気が付いたようです。(^^♪

 

私も連日の暑さにへたっておりましたところ、アサガオさんの花に励まされブログ更新いたしました。m(__)m

(プラネタリウム係 Y・M)

 

 

【春草展示第36期】ミニ解説①《林和靖放鶴図》

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7月30日から、菱田春草記念室 第36期展示 彩の魅力-春草の色彩表現-がはじまりました!展示作品から1点紹介します。


菱田春草《林和靖放鶴図》
明治33年(1900) 飯田市美術博物館蔵

林和靖(りんなせい)は北宋期の詩人で、生涯を通じて仕官せず、西湖のほとり孤山のふもとに庵を設け世間と離れて暮らしていました。梅を植えて鶴を飼って愛でていたことから、「梅妻鶴子」とも称されます。春草は、林和靖の清高な生涯に心を寄せたらしく、同画題の作品を幾つも手掛けています。本作の、画面右下に林和靖、左上方に一羽の鶴を配した対角線の構図は、南宋院体、画特に伝 徽宗《秋冬景山水図》(金地院蔵)の秋幅から影響を受けているでしょう。
明治30年代前半の春草は、墨の輪郭線を排し、色を塗り重ねぼかして描く空間表現に取り組みます。しかし混濁した色彩となり、批評界からは酷評を受けます。本作と同じ年に描いた《菊慈童》に対する批評では、象徴的な「朦朧体」の言葉も出てきました。

菱田春草記念室 常設展示 第36期 彩の魅力-春草の色彩表現-は8月28日まで。春草の色の探求をぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第35期】ミニ解説⑤未完成の山水図

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菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-を開催しています。

今期の展示室では、水墨表現にまつわる未完成作品を紹介する一角を設けています。


右から
菱田春草《雨中山水》(未完)  明治30年代頃 本館蔵
菱田春草《山水》(未完)  明治40年代頃 下伊那教育会蔵(本館寄託)
菱田春草《雨後の山》(未完)  明治40年代頃 本館蔵

《雨中山水》は明治30年代の朦朧体期の作例です。画面全体にぼかしを用いており、墨色のみで湿潤な空間をあらわしています。墨のグラデーションからは、多様な色彩が感じられます。
《山水》は明治40年代、画面の明瞭化を重視した時期の作例です。遠景の樹木には点描表現も用いています。となりの《雨中山水》と画題としてはほぼ同じであり、ともに墨を基調としていますが、制作年代で表現の違いを確認できます。
《雨後の山》は、《山水》の構図をやや改め、樹木には緑色を加えています。いずれも、湿潤な空気に包まれた山と木々が描かれている同じ画題の未完成作。比べることで時代ごとの描き方のちがい、短期間での表現の工夫の変化などがみえてきます。

そして、《山水》《雨後の山》を経た完成作と考えられる作品が、《夏山雨後》(明治42年頃 播磨屋本店蔵) です。(今回この作品の展示はありません。) 実景らしさをもちつつ装飾性をつよめた構図をとり、明瞭な色彩も加わり、晩年の春草らしい作になっています。未完成作と比べることで、構図の変遷がわかります。その試行錯誤の様子と、妥協を許さない春草の制作姿勢もうかがえます。

春草は、綿密な写生や構想の後、大下絵(完成作と同じサイズの下絵)無しの一発勝負で描くことが多い画家でした。そのため、このようにいくつもの反故作(途中で描くのをやめた作品)が残っています。春草の作品から時折感じる凛とした空気というか、緊張感というか、そういったものは、制作姿勢からも出ているのかな、とふと思うことがあります。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第35期】ミニ解説④春草の参考資料

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菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-を開催しています。今回は、春草の資料類から、春草が制作の参考資料としてみていたものを紹介します。

春草の資料類の中には、模写や写生、印刷物の切り抜きなどを貼りこみ、綴じた貼り交ぜ帳がいくつか残っています。古画模写、動植物写生、参考写真や、同時代の仲間たちの作品の部分図など。春草の制作のための準備や、関心を持っていたものなどを垣間見ることができます。


左:春草の貼り交ぜ帳 右:國華102号

貼り交ぜ帳にある、大きな山水図の切り抜きが貼ってあるページに注目。これは『國華』第102号(明治31年3月)掲載の雪舟落款《山水図》の切り抜きであることがほぼ確実となりました。春草が同時代の美術史研究の雑誌を読んでいた、ということが分かります。そして、これを典拠にしたと考えられる本制作も残っています。《高士望岳》(明治35年1月、広島県立美術館蔵)がその作品であると確実視されています。

朦朧体期の春草は、宋代院体画や漢画系の古典様式を典拠とする例が多くみられます。「西洋的の改良を加へん」としつつ、「日本美術の気韻は何処迄も之を存し置」くべし、とする師・岡倉天心の意向をかなり反映した結果といえます。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第35期】ミニ解説③《高士訪友図》

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菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-の展示を開催しています。展示中の作品から1点紹介します。


菱田春草《高士訪友図》
明治41年(1908)頃 本館蔵

本作は、ロバに乗って、遥か山の上の楼閣に住む友人を訪ねる高士の様子を描いています。装飾性を重視した画風に向かう晩年の作。明瞭な墨彩と巧みな構成で描いています。稜線から頭をみせる楼閣によって、高士のすすむ遥かな道のりが伝わります。

①筆墨のいろいろ
春草がどのように筆を運んだのか、作品にあらわれた筆致からみることができます。様々な画風を経て描法を体得した晩年の春草がみせる、幅広い水墨表現があらわれています。近景は、側筆(寝かせた筆)を用いて、払うような筆致で峻厳な岩肌を描きます。中景の山では、筆先を置く点の表現や筆のストロークを見せる描き方によって、山肌の様子を描いています。山の向こうにみえる楼閣は、くっきりとした線で形をとらえ、シンプルにはっきりと描いています。遠景にかすむ山は、淡墨の色面をぼかして描きます。また、ぼかしと描かない余白をいかして霧めいた山道をあらわしています。

②墨の色彩
明治30年代の朦朧体期は、具墨(混色した墨)を用いることも多かったため、墨のグラデーションで描いた画面はやや混濁していました。40年代にすすむと、本作のように墨のみの色彩で描き、画面は明瞭になっています。
また、近景は濃い墨を、遠景にいく程淡い墨を用いることで、奥行きを描き出しています。これは空気遠近法の表現を取り入れたものでしょう。

③画面の構成
稜線を交互に排して、画面を近景・中景・遠景の3つに分割しています。明快な構図をとっているのが特徴です。
近景を低い位置にし、高士を小さく描くことで、この景色の雄大さをあらわしています。余白を用いて霧を表現することで、神秘的かつ深い空間の広がりも描いています。
また、中景の向こうに少し頭を見せる楼閣によって、高士が進むはるかな道のりが伝わります。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第35期】ミニ解説②《秋郊月夜の図》

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菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-を開催しています。展示中の作品から1点紹介します。

菱田春草《秋郊月夜の図》
明治34年(1901) 本館蔵

夜の河畔の群鴨を、墨の濃淡を基調に描いています。前景の深く濃い墨色による明瞭な表現に対し、中継から後景にかけては、輪郭線を排した無線描法、朦朧体らしい表現を使う、異なる描き方を合わせた春草の挑戦がみえます。中景の草むらで二視点にわけるような、古典にならった構図をとりながら、さらに奥行き感をあらわす空間表現も加えようとしている意欲作です。
特に後景には、淡い墨と薄い色彩を重ねたグラデーションを用いています。墨を基調とし色彩をしぼっているからこそ、満月の冷たい光が照らす夜の色彩があらわれています。朦朧体の表現を用いながらそこに明瞭さを少し加えた、バランスのとれた構成となっています。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

文化トピック展示「飯田城から追手町小学校へ」

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6月8日から文化展示室においてトピック展示「飯田城から追手町小学校」を開催中です(9月11日まで)。

 美博の隣に建つ追手町小学校は今年で開校150年を迎えます。また、国の有形文化財に登録された校舎は飯田城の跡に建てられ、昭和22年の飯田大火を逃れた建物です。追手町小学校は、明治維新後の飯田の歴史を伝える貴重な資料でもあります。

追手町小学校の前には飯田出身の詩人日夏耿之介の碑があります。先日開催した日夏耿之介の足跡をたどる見学会でも訪ねました。

今年は飯田藩主だった堀家が飯田へ入部して350年の節目ということもあり、美博では“飯田”をテーマにした様々な催しを企画しています。秋には特別展も開催予定です。”飯田”を通して歴史を学び直してみるのはいかがでしょうか。

(人文分野)

【春草展示第35期】ミニ解説①墨の情趣

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菱田春草記念室 第35期展示 墨の情趣-春草の水墨表現-の展示がはじまりました!今回の展示は、春草の作品の中から、墨を基調に描いた作品を集めました。筆意を込めた線で描く学生時代~初期、具墨(混色した墨)やぼかしを用いて空間を描く朦朧体期、画面の明瞭化をはかった渡米期、そして装飾性を強めていく晩年期。古典を参照しながら革新を目指す画風の中で、春草はそれぞれに見合った墨の表現を探求しました。「墨に五彩あり」といわれるように、グラデーションがみせる多彩な色感や、濃淡や渇潤が織りなす豊かな表情をご覧ください。

展示室の様子を一部ご紹介します。


春草が使用した墨、菱田家所用の名硯。硯については、装飾のある面を下に置いて、無地の面をすったあとのある、不思議な使い方をしています。

菱田春草記念室 常設展示 第35期 墨の情趣-春草の水墨表現-は7月24日まで。ぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)