子ども美術学校②墨から生まれる世界

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飯田下伊那の小学校4年生から6年生を対象とした絵画・工作の基礎講座、子ども美術学校。

第2回目は「墨から生まれる世界」がテーマ。墨と筆をつかって、水墨画の表現に挑戦します。

今回使うものは、

書道の時に使う墨汁とはちがう、すこし青い墨と、ドーサ液。


それから特別な和紙、画仙紙。

まずは、墨の濃淡、水分量による質感の違い、様々な表現のデモンストレーション。

その後、書道用半紙で各々表現に挑戦してみます。

その中でみつけた、面白いと思った表現をもとに、いざ画仙紙へ!
表情豊かな水墨の世界がうまれていきます。

 

完成した作品たちは、どれもとってもにぎやか!
モノクロの表現ながら、とても多彩に感じます。

 

造形活動のあとは、親子鑑賞会の時間。
菱田春草記念室にて《墨の情趣ー春草の水墨表現ー》の展示中。
春草さんはどんな水墨画の表現をしたのでしょう?

まずは菱田春草について、今回の展示について、簡単に紹介。

春草35期墨の情趣 親子鑑賞用シートを配布しました。

説明の後は、いよいよ親子でじっくりと展示を見に行きます。

春草がどんな表現をしているか、自分たちが体験した水墨の表現をもとに考え、
表現の工夫や面白さを探しに行きます。

筆の運びを手で真似してみたり、

リーフレットを参照しながらじっくり鑑賞したり。

「濃い墨がかっこいいね」
「こんなきれいなぼかしができるんだね」
「こういう薄い墨にするには水をたくさんいれるんだよ」
作品を見て感じたことや、みつけた表現の工夫、じぶんが造形活動の時間に体験したことをもとに考えたこと、たくさんの会話をしながら、親子で水墨画をたっぷり味わっている様子でした。

展示室Aの《須田剋太と書》の展示も。

造形活動の後に鑑賞活動をしたことで、より親しみを持ってみることが出来ていた様子でした。

(美術部門:菱田春草記念室担当)

宇宙朝顔②  新しい仲間も増えました!

プラネタリウム ブログ

種まきを5月24日、一本目が6月1日。3日は7本。

今日、私が休み明けで、なんと、、、24本! 植えたプランターすべてが発芽しました。

宇宙を旅したアサガオ。この種は、JAXAで宇宙放射線が植物の種子に及ぼす影響を科学的に調べることを目的としていましたが、地球に戻って十数年、すでにあちこちで研究されました。ここの種は、市民の方からいただいたものなので、もう何代目かわからないほどです。

昨年プラネタリウムで、収穫した種ですが、宇宙にいってきたアサガオの子孫です。

これからどのように育っていくか、楽しみですね。

 

さて、もう一つお知らせです。

ずっとプラネタリウムの受付前で過ごしていた黒メダカの赤ちゃんが誕生しました。

プラネタリウムスタッフのKさんが大事に育てていた水槽の黒メダカの卵です。

卵を別の水槽に移して、大事に育てていたものなので無事に育ってくれると良いですね。

可愛い仲間が増えて楽しみがふえました。プラネタリウムも投影再開していますので、皆様ぜひ遊びに来てください。

 

(プラネタリウム係 Y・M)

宇宙朝顔 今年も…

プラネタリウム ブログ

2010年4月に宇宙から戻ってきたアサガオの子孫。今年も、プラネタリウム「天歩」の2F受付前にプランター栽培中。

飯田市美術博物館(美博)の職員(種まきまではセミプロOさんにお任せでした~、感謝)の方々のお世話になりながら、やっと芽が出ました!これからは、プラネタリウムスタッフとしてしっかりと〝お世話がかり″ いたします。( ´∀` ) 

昨年、ここで収穫した種なので…今年はいくつ咲くかな!?

(Y・M)

中学校美術部の展示見学

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先日、竜峡中学校美術部のみなさんが、飯田市美術博物館に見学に来ました。

まずは40分間、美術博物館全体を自由に見学。自分たちが暮らす地域の自然、文化、美術と出会います。

見学が終わった後は、講堂にうつって約30分間、博物館入門の解説。

解説の後は郷土の大先輩、菱田春草の丁寧な鳥の作品や写生を見た後なので、同じように鳥の剥製を描いてみることに。
(自然部門から鳥の剥製を借りられるのが美術博物館の強みです)



よくみて、いろやかたちの魅力をさがして、自分が気になったところを丁寧に描く体験をしました。


午前中半日、たっぷり美博で過ごしてくださいました。
竜峡中学校美術部のみなさん、ありがとうございました!

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第34期】ミニ解説④下村観山《稚児文殊》

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています!展示作品から1点、紹介します。

下村観山《稚児文殊》

春草と観山は、共に日本美術の革新を目指し切磋琢磨しあった仲でした。観山は、春草にとって年齢も美術学校の学年も春草の1つ上の先輩です。美術学校卒業後も、日本美術院で拠点を共にし制作に励みました。春草にとって長い時間近くにいた、画家仲間の一人です。

また、春草と観山の関係において欠かせないのは、春草の兄・為吉との関係です。為吉は、東京に暮らした頃は春草の生活の面倒をみていました。為吉の給料日になると、春草とその友人数人が為吉の帰宅を家の前で待っていたそうです。そして為吉の給料から、春草は1円札をもらい、友人たちとご褒美外食に繰り出したそうです。その友人たちの中にいた1人が、観山でした。
美術学校を卒業後、観山は画家兼同校の教員になりました。社会人になり、画家になり、学生時代にご馳走になっていた為吉へお礼を伝えるために1つの作品を描いて贈りました。まさにそれが、《稚児文殊》でした。

菱田春草記念室 常設展示 第34期 美術学校での学び-春草の基礎学習-は5月29日まで。画家・春草の始まりをぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第34期】ミニ解説③《鎌倉時代闘牛の図》

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています。展示作品から1点を詳しく紹介します。


菱田春草《鎌倉時代闘牛の図》明治27年4月 飯田市有形文化財

①豊かな表情
都路で突然始まった牛のぶつかり合い。驚く人、賑やかす人、嫌がる人、怖がる動物も。感情や声まで想像できる、それぞれの豊かな表情に注目してご覧ください。

②こだわりの線描
牛は、抑揚のある線で、力強い体の様子を描いています。人物の着物は、ハリのある着物は硬いまっすぐな線で、着慣れた様子の着物は曲線で、質感を描き分けています。

③絵巻物からの学び
古画からの学びは、春草の生涯を通して制作の軸となります。本作を描くときには「鳥獣人物戯画」の乙巻や「一遍上人絵詞伝」など絵巻物を参照したと考えられます。特に、「一遍上人絵詞伝」は模写が複数残っており、特に人物表現、表情や装束に注目して描いています。鎌倉期の特徴ある装束は、《鎌倉時代闘牛の図》にそっくりな姿で引用されています。

④西洋美術の技術を取り入れた空間
手前側を濃い色で、奥を薄い色で描く空気遠近法を取り入れています。また、画面の左上のぼんやりとした表現で、奥にも空間が広がっていることを描いています。このように、西洋美術の空間・遠近の表現を取り入れています。

⑤新しい日本画の姿
①〜③は言い換えれば古画からの学び、④は西洋美術の技術。日本の伝統や筆法を学ぶ「臨画」の学びと、西洋の写実・空間表現の学び「写生」をもとに、独自の制作を進めていく「新按」らしい作品で、これこそが美術学校が目指していた「新しい日本画」と言えるでしょう。着実に学び、意欲的な新按の制作を行っていた春草だからこそ描くことができた作品です。

⑥兄へ贈った受賞作
この作品は、東京美術学校の校友会臨時大会に出品し、約260点中2位の成績を受けました。現存する中では最初の受賞作品です。
春草の兄・為吉は、春草が画家の道に進むことを応援し、東京で暮らす間は春草の生活の面倒を見ていました。為吉が熊本へ赴任中は、春草は度々書簡を通して、学校での出来事や制作の構想などを伝えています。明治27年6月8日付の為吉宛 春草書簡では、岡倉天心から受けた指導、自身の卒業制作への意気込みなどを語った後に「賞の画(牛の画)」を贈ります、という内容が書かれています。良き理解者である兄へ、受賞作を贈ることで学びの成果や感謝の気持ちを伝えたかったのかもしれません。本作は長く菱田家の所蔵にあり、平成30年から当館の所蔵に、そして飯田市有形文化財に指定されています。

菱田春草記念室 常設展示 第34期 美術学校での学び-春草の基礎学習-は5月29日まで。画家・春草の始まりをぜひご覧ください。

(菱田春草記念室担当)

子ども美術学校①友だちの顔をかく

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飯田下伊那の小学校4年生から6年生を対象とした絵画・工作の基礎講座、子ども美術学校。(地域ゆかりの作家 菱田春草の学んだのが「東京美術学校」なのが名前の由来だとか)今年度も開校しました!

第1回目は「友だちの顔をかく」がテーマ。

隣の席の、はじめましてのお友だちの顔を、かたちや色を発見するつもりで、よくみる。

まずは黄色のチョークのはらを使って、もあもあ と大きく形をとらえます。

つぎに、黒色のパスで線描きをします。息の長い一本線で、カタツムリのはやさで、力強くかく線・弱めにかく線を使い分けながら。友だちの顔から目をはなさずに描きます。

交代でお互いの顔をとらえた後は、色塗りです。よくみたときに感じた色を、6色以上パレットに出して、とんとんと筆先で色を置いていきます。気分は印象派の画家。色の重なりも、全体の色合いも、楽しみながら塗っていきます。


いい色ができた!とんとんとん…


「日焼けしてるからすごく赤く見えるよ!」
「まぶたのところにすこしみどりがある!」

お互いの顔をよくみながら描いていくうちに、自然と打ち解けていきます。

個性豊かなお友だちと、楽しい美術学校になりそうな予感!1年間よろしくお願いします☺

(美術部門:菱田春草記念室担当)

【春草展示第34期】ミニ解説②《牧童》

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています。

日本画の近代化を目指す東京美術学校では、特徴ある3つの基礎学習「臨画(りんが)日本や中国の古画を元にした手本を模写して、運筆法と伝統画風を学ぶ授業「写生(しゃせい)対象を正確に描く、西洋美術の写実法を学ぶ授業「新按(しんあん)独自に構想した画題を描く授業を設けられていました。


新按の課題で春草が描いた、《牧童》明治26年(1893)は、
[臨画の成果]狩野派らしい筆法 +[写生の成果]牛の毛並みに見る写実性と、空間表現
⇒[新按らしさ]いきいきとした墨線の表現から、無邪気な牧童の様子までも伝わってきます。
意匠や理想の表出を求められる新按の課題は、作品の構想を深める訓練となり、精神や情感、技術を兼ね備えた新時代の画家になるための準備になりました。
東京美術学校の、日本の伝統に西洋の技術を加えて新しい絵画を目指す学びは、彼の画業の核となったのでした。

(菱田春草記念室担当)

【春草展示第34期】ミニ解説①美術学校に入るまで

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菱田春草記念室 第34期展示美術学校での学び-春草の基礎学習-を開催しています。春草の美術学校入学前の様子を紹介します。

菱田春草(本名・三男治(みおじ))は、明治7年(1874)に飯田に生まれました。
5歳から13歳まで、飯田学校で学びました。真面目に勉学に励み、比較的良い成績をおさめていたようです。飯田学校で開催された教育展覧会では図画を出品し、優等賞を受けました。担任で後に洋画家として活躍する中村不折からは、画家の道に進むことを勧められたほど、絵の得意な少年だったようです。


 飯田学校卒業写真。下段右から4番目が春草。

飯田学校卒業後は、画家の道を目指して東京へ向かいました。先に上京していた兄・為吉(ためきち)世話になりながら、美術学校入学へ向けて画塾へ通い始めます。画塾の師は、狩野派の画家で美術学校の講師でもあった結城正明でした。正明の画塾では、主に「古画の模写」と「植物の写生」をおこないました。画塾での約1年の学びを通して、美術学校に入学するための準備をしました。


 上京した頃の一枚。幼さが残ります。

(菱田春草記念室担当)

元善光寺のご開帳だけでは片詣り?

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飯田市座光寺にある「元善光寺」では七年に一度の「ご開帳」がおこなわれています。
それに合わせて本館の文化展示室では元善光寺やそのご開帳の歴史を紹介したトピック展示「元善光寺のご開帳」を開催中です(5月29日まで)。

ひときわ目につくのが善光寺の縁起を視覚化した「善光寺如来絵伝」。元善光寺はどのように描かれているでしょうか。

また、この展示の内容を詳しく解説した講座「女たちは善光寺を目指す」と「善光寺信仰と元善光寺」を美博のYouTubeチャンネルにおいて期間限定で公開しています(https://www.youtube.com/channel/UCXaiqvZ1w-tHrvF_DttQF9g)。

元善光寺のご開帳への参詣に加えて、美博へもう「一詣り」してはいかがでしょうか。

人文部門