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 ■■■地形・地質観察ガイド-低山・渓谷地域-■■■
 竜頭山 大輪〜竜頭山
 
 気田川と天竜川とにはさまれた南北に細長い尾根の主峰が、竜頭山(1352m)である。ここには二等三角点がある。山頂付近の稜線はなだらかであるが、気田川沿いにある戒光院は山伏の修行場だったという。東西へ流れ落ちる支流は下流ほど急峻となっており、多くの滝をかけている。このような場で修行が行われたのかもしれない。稜線付近には、水窪ダムから山住神社をへて秋葉神社へいたるスーパー林道が通っている。そのため、この林道を使えば、簡単に山頂に立つことができる。ここでは、天竜川沿いの大輪から半血沢ぞいに登り、山頂までピストンするコースを紹介しよう。

■天竜川のV字谷と縣谷

■天竜スギの植林地と三波川帯の岩石

■断層鞍部と青ナギ

■天竜スギに覆われた尾根道と山頂広場

▲山頂南側の砂岩の岩塔
 


 

■天竜川のV字谷と縣谷 

 南流してきた天竜川は、中部天竜でいったん東へ向きをかえ、水窪川を合わせると再び南下する。この付近は赤石山地の北東−南西方向の隆起軸を横切っているため、大地を著しく侵食し、谷はV字形をしている。このような河川を先行谷という。
 支流よりも本流の方が侵食量が大きいため、支流は下流ほど急となっていて縣谷をなし、滝をかけているところも多い。両岸の斜面は川岸から300mほど高い標高350〜450mのところに遷移点や緩傾斜面があり、ここに古い集落が並んでいる。秋葉街道は、左岸側にあるこれらの集落をつなぐようにして秋葉神社へ向かっている。
 竜頭山の登山口である大輪は、天竜川沿いの集落である。大輪橋のたもとの観光トイレから東へ県道を行くと、半血沢が現れる。この沢の手前からのぼる。
 
▲木馬道を兼ねている登山道

■天竜スギの植林地と三波川帯の岩石 

 この登山道は、木材を搬出する木馬道を兼ねていて、道幅にそろえて横木がずっと並んでいる。最近はほとんど使っていないらしく、横木が腐りかけ桟橋もくずれてしまっているところが多い。しかし、岩盤を削ったり、石組みをして急斜面を巻くようにつけられた道はりっぱなものだ。道は天竜スギの植林地の中をゆっくりと半血沢に沿って登っていく。
 道沿いの露頭は平行に割れやすい黒色片岩という岩石で三波川帯の結晶片岩(変成岩)だ。地下深くで泥岩や砂岩が変成して黒雲母ができているので、太陽の光にかざすとキラキラと光る。秋葉街道との交差点付近から緑色片岩がでてくる。沢沿いの水流で磨かれたところでは、緑の縞模様がたいへん美しい。
 
▲三波川帯の緑色片岩

■断層鞍部と青ナギ 

  緑色片岩から崖錐をへて、ふたたび黒色片岩へかわる。緑色岩が露出した小さな沢を渡ると、道はしだいに川から離れ、尾根へ登っていく。このあたりから足下の転石は砂岩ばかりとなっていく。この黒色片岩と緑色岩・砂岩との境界に赤石裂線(水窪赤石構造線)が南北に走っている。三波川帯の岩石と四万十帯の岩石が断層をはさんで接しているわけだ。しかしながら、この付近では赤石裂線の主断層は確認できない。
 すぐに青ナギと名づけられた峠につく。峠の南側は崩れていて、砂岩・泥岩の破砕帯になっている。近づくと小さなキンクバンドが密集している。この破砕帯も赤石裂線の副断層と考えるべきだろう。
 
▲青ナギでみられるキンクバンド

■天竜スギに覆われた尾根道と山頂広場 

 青ナギからは、西へ上がる尾根を北から巻くようにゆっくり登っていく。このあたりは立派な天竜スギの植林地だ。炭焼き小屋の跡をすぎると、右へ折り返して山腹をのぼっていく。足下の転石は泥岩がときどき見られるが、ほとんど砂岩だ。
 尾根の南を巻きながら、沢へしだいに下りていく。伏流した沢にでると、植林地から急に明るい雑木林となる。林床にはバイケイソウ類が茂っている。枯れ沢をさかのぼると、スーパー林道から伸びてきた遊歩道にであう。この道を北東へ行き、稜線を越えると、突然芝生の張られた広場がでてくる。稜線付近の小道を探して南下すれば頂上につく。遊歩道を南西へ行けば、山頂の西斜面を巻いて頂上のすぐ南の展望台にでる。
 山頂付近は、山腹と違ってなだらかで、林道や遊歩道が縦横にめぐらされている。また、電波塔などがいくつも立っていて、開発し尽くされた感がある。
 
▲バイケイソウ類が茂る山頂